関電学研本線は梅田−新祝園間32.1`の路線で、近鉄京都線と直通運転を行っており、支線に天神橋線がある。また、新守口で本線と交差し、蔀屋で河内線と接続している。学研本線・天神橋線ともに全線複線である。関電ではこの2線だけが標準軌となっており、本線などの狭軌の路線とは線路がつながっていない。
大阪−学研都市間の輸送ではJR片町線と競合しており、学研都市内の主要地点へは運転本数・運賃ともに大幅に優位に立っているが、JRの攻勢は激しく、安穏とはしていられない状況だ。急行がおおむね30分毎に近鉄京都線に乗り入れて新田辺まで直通しているが、JR片町線・東西線の京田辺−北新地間と比較すると、新田辺−梅田間は関電と近鉄で690円かかり、JRの運賃650円よりも高くなる。さらにJRが平成14年2月に京田辺駅を改良し、それまで松井山手で行っていた切り離しと連結を京田辺で行うようになったことから、京田辺−北新地間の所要時間は39分に短縮され、学研本線の新田辺−梅田間41分を上回るようになった。JRの攻勢に対抗するには、直通運転本数の増大や130`運転によるスピードアップを行うべきである。
また、平成18年には生駒−登美ヶ丘間の京阪奈新線が開業し、近鉄東大阪線と大阪市地下鉄中央線を通して大阪都心へ直結することから、大阪市中心部へのアクセスでは競合することになる。これに対抗するためには、現状で30分毎の準急や急行しかない天神橋線との直通列車を増加させ、少しでも利用客の減少を食い止める必要がある。
学研都市への奈良都心からのアクセス路線として学研中央−奈良中央間の新線が望まれ、近畿地方交通審議会でも整備すべき路線として答申している。新祝園−玉水間を延伸してJR奈良線と連絡することも検討されたが、これは採算性がないと判断され、答申は見送られた。
昼間時は蔀屋以東で通過運転する新田辺−梅田間の急行が概ね30分毎の運転となっている。しかし、学研都市の活性化のためにはさらなる利便性の向上が必要であり、急行も10分毎の運転とすべきである。現状では遅い準急しか利用できない時間が多く、沿線の南側からは、快速急行と急行があわせて1時間に6本走る近鉄奈良線を選択する人も多い。急行を増発し、さらに130`運転によって所要時間を短縮することで、これらの客も学研本線を利用することになる。
京都方面から学研都市への利便性の向上も課題だ。現在はほとんどが関電から近鉄新田辺までの乗り入れであるが、近鉄京都から、あるいは国際会館からも頻繁に直通列車を運転すべきである。急行の一部を新田辺で4両と2両に分割し、2両を学研中央へ直通させるとよい。
【沿線概要】 起点は梅田だが、近鉄京都線にあわせて京都に向かう方を上りとしており、梅田方面が下りとなるので、それに従って新祝園から述べる。
新祝園は島式ホームと相対式ホームを組み合わせた2面3線で、近鉄新祝園駅とJR祝園駅に挟まれている。新田辺側に引上線が2本と、単線の近鉄との連絡線があり、この連絡線を介して直通運転を行っている。このため、関電と近鉄は改札内連絡となっている。JR祝園駅とは人工地盤でつながっている。直通運転は朝に数本ある他は主に昼間時以降に行われ、概ね30分毎であるが、これはJR片町線の京田辺駅と同じ運転頻度であり、梅田(北新地)への所要時間や運賃で後れをとっているためにあまり意味がない。新田辺への直通運転を効果的にするには、スピードアップとともに本数を増大すべきであり、そのためには連絡線の複線化が必要である。
新祝園を出ると、すぐに高架線となって右にカーブし、JR片町線をオーバークロスする。精華台は平成16年6月に開業した新駅である。ここから学研本線は国道163号線に沿って西へ進む。学研中央は島式ホーム2面4線で、新祝園側に引上線が2本ある他、両方向に折り返しができる配線になっている。近鉄や京都市地下鉄の電車が常時乗り入れることも検討されているが、現在ここで折り返す近鉄電車は平日の朝に1往復のみである。
奈良先端科学技術大学院大前は、駅名の通り駅前に奈良先端科学技術大学院大学があるが、この駅名はいかにも長すぎる。観光客を誘致するために駅名に特色を出さなければならない地方ローカル線ではないのだから、駅名の長さ日本一を競う必要はなく、呼びやすい名前とすべきである。「大学院大学前」で十分であろう。
下田原も島式ホーム2面4線の高架駅で、新祝園寄りには、南に向けてイモ山車庫への引込線が伸びている。下田原を出るとすぐに4`弱の清滝トンネルに入り、大阪平野へと下る30‰の勾配が続く。この連続急勾配のため、全ての編成に抑速ブレーキが装備されている。300系にはもともとはなかったが、清滝−蔀屋間を延伸した際に改造された。
トンネルを抜けたところに清滝がある。立地を活かして大阪平野を一望できるスカイタワーきよたきが併設されており、展望台や一部の店舗は深夜24時まで営業している。このため、梅田行最終は0時16分と遅い時間に設定されている。
清滝を出ると、またすぐに30‰の下り勾配となる。JR片町線をオーバークロスすると蔀屋である。
蔀屋も島式ホーム2面4線で、河内線との乗換駅であり、すべての列車が停車する。ここでは梅田方面からの普通のほとんどが折り返すため、新祝園側に引上線と3本の留置線がある。現状のダイヤでは準急と普通の接続が悪く、乗り換えに5分以上待たされる。かといって、蔀屋での接続をよくすると新守口で緩急接続ができない。やはり、急行を増発して10分毎の運転とし、新守口で急行と緩急接続、蔀屋で準急と接続という形にすべきである。
河内線は学研本線と直角に接する形でホームが置かれている。学研本線と違って狭軌であるため直通運転はできない。JR東西線の開業により、河内線から大阪都心へ向かう客を野崎でJR片町線に奪われており、ダイヤを工夫して乗り換えやすくなるようにしているが、減少分を回復するまでには至っていない。連絡線を設け、河内線を改軌するかGCT(Gauge Change Train)を走らせれば、乗り換えなしで梅田に向かうことができるようになる。もし全線の改軌が難しいようであれば、八尾を境に標準軌と狭軌に分割することも考えられる。
門真団地には準急が停車する。島式ホーム2面4線で、折り返しが可能なように新祝園側に引上線があるが、ほとんど使われていない。
新守口では本線と交差する。学研本線が2階、コンコースが1階、本線は地下1階であり、乗り換えに手間がかかる。荷物の多い関空利用客が乗り換えることを考えると、ホーム間の直通エレベータを設け、乗り換えを便利にすべきである。上下線ともここで緩急接続することが多い。
城北、毛馬は待避可能な島式ホーム2面4線で、その間にある赤川は天神橋線が分岐する駅である。島式ホーム2面3線で、赤川折り返しの天神橋線普通列車が発着する中線は両側のホームに接している。赤川には準急が停車し、急行・区間急行は停車しない。これは天神橋線へ直通する列車であっても同様である。学研本線と天神橋線の直通列車は、朝は16分毎に準急が直通するが、昼は30分毎の準急、夕方から夜は30分毎の急行と一部の普通に限られている。多くの場合は赤川での乗り換えが必要で、新守口で本線に乗り換える場合には2回の乗り換えを強いられる。直通する優等列車を増加させる必要がある。
赤川の西側でJR城東貨物線をオーバークロスしており、城東貨物線がJR大阪外環状線として開業すると都島赤川駅ができて乗換駅となる。連絡通路を設けて乗り換えしやすい構造とし、全列車を停車させれば新大阪へのアクセスが便利になる。そうすると梅田や天神橋へは急行・区間急行の所要時間が伸びてしまうが、学研本線は線形の良い区間が多く、スピードアップは充分可能であるので、それで相殺できる。
長柄橋の手前から地下に入る。長柄橋は阪急千里線との交点にある駅だが、阪急側には駅がない。中津は左カーブ上にある島式ホーム1面2線の駅で、地下鉄御堂筋線の中津に近く、阪急の中津からは遠い。紛らわしいので阪急の中津は「西中津」とでもすべきである。
中津からはJR梅田貨物線の地下を進む。梅田は8両対応の櫛形ホーム4面3線で、引上線が1線ある。梅田貨物駅の東にあり、周辺では梅田貨物駅を撤去しての大規模な再開発が進められている。関電梅田駅がある南東エリアは先行開発区域となっている。梅田貨物線は地下化され、関電梅田駅の西側に北梅田駅が設けられる。さらになにわ筋線が建設されればこれも北梅田に乗り入れ、新大阪へ直通する。学研本線は標準軌だが、中津から連絡線を建設し、GCTを使用すれば直通運転することができる。関空へのアクセスは本線からも可能だが、難波方面へのアクセスが便利になるメリットがある。
中津から連絡線を設けるなら、阪神の野田駅東側に接続して直通することもできる。これならどちらも標準軌なので都合がよい。新田辺から三宮や姫路への直通急行を走らせれば、JR片町線から東海道山陽線への直通運転に対抗できる。
天神橋線は赤川を出ると学研本線の上り線をくぐって南にカーブする。都島、友渕は急行や準急は通過する。桜ノ宮は大阪環状線との乗換駅である。桜ノ宮や松ヶ枝町は大川に近く、桜の季節には行楽客で賑わう。天神橋は大阪天満宮の南側にあるが、JR東西線に乗り換えるには大阪天満宮の境内を通り抜ける必要があり、京阪の天満橋や北浜へは天神橋を渡らなくてはいけない。平成元年に京阪中之島新線を整備路線とした際には天神橋線を延伸させることも検討されたが、すでに天満橋駅で準備がされていたことや、京阪は寝屋川・枚方・京都と大きな後背地を抱えていることから、京阪の路線として整備することとなった経緯がある。玉江橋付近には大阪国際会議場ができ、学会や研究会議などで学研都市からの需要も増大しているので、天神橋から延伸して新北浜の手前で合流するとよいのではないか。再検討する価値はあるはずである。
天神橋線は全駅とも6両対応なので、8両編成の列車は入らない。花見の季節や天神祭などで臨時列車が運転されるが、桜ノ宮・松ヶ枝町・天神橋を8両対応に延伸し、8両編成の列車を運転すれば効率よく乗客を捌くことができる。架空鉄道なのでそのための用地はなんとでもなる。
梅田に向かって漸増する。蔀屋で河内線からの乗り換え客が加わるが、JR片町線に乗客を奪われていることや、河内線方面へ向かう客も少なからずいるので増加幅はさほど大きくない。新守口で本線からの乗り換え客が加わって大きく増加し、赤川で天神橋線へ向かう分減少するが、梅田に向かう流れが圧倒的に大きい。
【車両】 6700系、3700系、2700系、1700系、2400系、300系があり、81編成304両が在籍している。編成は2・4・6両のいずれかで、これを組み合わせて6両または8両で運転する。学研本線と天神橋線で共通運用されているが、300系は唯一の3扉車のため近鉄に直通することができない。また、清滝延伸以前に製造されたために出力が小さく、連続急勾配への対応も難しい。このため300系は学研本線での営業運転には適さず、現在ではほとんどが天神橋線内での運用である。出入庫を兼ねて学研本線と直通することもあるが、営業運転は赤川−蔀屋間に限られ、蔀屋−下田原間は回送となる。300系は現在2編成12両のみで、平成17年度中に廃車となることが決まっている。
その他の車両は近鉄と仕様を合わせており、20m級4ドア車である。近鉄との直通をにらみ、長距離運用に備えてクロスシート車を作る計画もあったが実現せず、全車両ともロングシート車となっている。
6700系はアルミ車体のVVVFインバータ制御で、ドア数と軌間を除けば本線の6000系とほぼ共通の仕様である。現在は1編成6両だが、今後順次増備される予定。平成17年には増結用の2両編成が増備される。
3700系は関電唯一のステンレス車である。また、唯一の無塗装車でもあるが、6700系の増結編成は無塗装となる予定だ。300系の置き換えのために製造されたが、本線との車体の共通化が決まって増備は打ち切られ、4編成24両にとどまっている。
2700系は学研本線の主力車両で、急行、区間急行、準急の運用に入ることが多い。6両編成11本のほかに2両編成が14本あり、朝ラッシュ時には6700系や3700系とも連結して8両編成で運転される。
普通には1700系と2400系が主に充当され、1700系の一部が6両固定なのを除いて2+4の6両で運転される。
【ダイヤ】 急行、区間急行、準急、普通がある。急行の停車駅は国会図書館前、学研中央、下田原、蔀屋、新守口で、天神橋線では桜ノ宮と松ヶ枝町に停車する。近鉄京都線に直通する場合、新田辺までは興戸、三山木に停車し、狛田と近鉄宮津は通過するが、朝に1本だけある京都行急行に限り、興戸、三山木も通過する。
区間急行は朝ラッシュ時のみ運転され、急行の停車駅に加えて精華台と鹿ノ台が加わり、新祝園−鹿ノ台間は各駅に停車する。
準急の停車駅は、新祝園−蔀屋間各駅と門真団地、新守口、赤川である。天神橋線直通列車は急行と同じく桜ノ宮と松ヶ枝町に停車する。新田辺まで直通する場合は狛田のみ通過する。
朝ラッシュ時の梅田方面は、16分サイクルに梅田行急行・区間急行・準急があわせて4本、天神橋行準急が1本、蔀屋−梅田間普通が2本、天神橋線内の普通が2本走るのが基本パターンである。学研本線ではピーク時1時間に27本(うち天神橋線直通4本)の過密運転であり、特に新守口−梅田間の所要時間が昼間時と比べると大幅に延びている。昼間時、学研中央−梅田間の急行の所要時間は26分だが、朝ラッシュ時には最も遅い列車で33分もかかっている。
緩急接続は新守口で行われ、普通は、梅田行の急行・準急(急行が区間急行の場合もある)の2本、もしくは梅田行の急行・区間急行(準急になることもある)・天神橋行準急の3本を1束として待避する。普通からの乗り換え客と本線からの乗り換え客が殺到するため、優等列車のそれぞれの束で最初に新守口を出る急行や区間急行は必ず8両編成となっている。それでも、門真団地で追い越した天神橋行準急が後続にいる場合は、蔀屋で準急から乗り換える客が多く、相当混雑している。
蔀屋−梅田間ではほぼパターン化されているが、新祝園−蔀屋間では、5〜10分毎の乗車機会は確保されているものの、それが区間急行だったり準急だったり、行先も梅田行だったり天神橋行だったりとまちまちである。各列車の始発駅も新祝園・学研中央・下田原が雑然と並んでいる。通勤や通学の目的地は決まっているため、列車によって乗り継ぎの有無や乗り継ぎ駅が変わるのでは不便この上ない。整理してパターン化すべきである。
昼間時は30分サイクルで、新田辺−梅田間の急行1本、新祝園−梅田間の準急が2本、新祝園−天神橋間の準急が1本、蔀屋−梅田間の普通が3本走る。天神橋線内でも普通が3本走る。梅田では急行・準急があわせて約10分毎に発車するため、準急の間隔が10分、20分と揃わないが、急行は赤川から天神橋発の準急の2分後を走り、新守口では天神橋発の準急から急行に乗り継げる。急行に乗って門真団地へ行く場合は新守口で緩急接続している普通に乗り換える。急行は門真団地で準急を追い越すため、清滝から先の急行通過駅に向かう際には蔀屋で後の準急に乗り継げる。下りも同様に、蔀屋で準急から急行に、新守口で急行から準急に乗り継げる。このように天神橋発着の準急と接続することで運行本数を少なく抑えている。
夕ラッシュ時も30分サイクルである。新祝園−天神橋間の直通列車は急行に変わり、準急は新祝園−梅田間で3本運転される。この他、昼間時から引き続いて新田辺−梅田間の急行が1本と、蔀屋−梅田間、赤川−天神橋間の普通が3本運転されるが、近鉄直通の急行を近鉄のダイヤに合わせているため、運転パターンは昼間時とは多少異なっている。急行は、新祝園−新守口間で概ね15分毎の運転となる。
天神橋発着の急行は21時台で終わり、以後は梅田発着の急行、準急があわせて10分に1本運転される。23時以降は準急が15分毎に走る。
【将来・所見】 学研都市をめぐって競合する各線の攻勢は活発である。JR片町線は急ピッチで改良が進んでおり、現在単線である松井山手−木津間も複線化すべきことが答申されている。平成18年には近鉄の京阪奈新線が登美ヶ丘まで開業し、近鉄線内で95`運転を開始する。京阪奈新線は将来新祝園や高の原まで延伸され、学研本線との競合はますます激化する。
学研本線は急行の本数が少なすぎる。昼間時、梅田発の急行を10分毎とすべきである。そして新祝園行と新田辺行を交互に運転する。準急は梅田発着と天神橋発着を10分毎に交互に運転する。新守口で急行と普通が緩急接続し、蔀屋で準急と普通が接続すれば、直通運転は30分毎から20分毎となって本数が拡大するし、非常に利用しやすいダイヤになる。
さらに、近鉄京都線の急行を新田辺で2両と4両に分割し、2両を学研中央まで直通させれば、京都方面からもアクセスがよくなり、利用の増加と学研都市の活性化が実現する。整備路線として答申された奈良中央−学研中央間の路線も早期に建設し、直通運転を行うべきである。
狭軌である本線や河内線との連携も重要だ。CGTが実用化され、連絡線を建設して直通できればそれに越したことはないが、直通できなくとも接続の改善や駅設備の改良で乗り継ぎをしやすくするべきである。
このようにして学研都市を中心とした広域鉄道ネットワークを形成すれば、JRや近鉄の攻勢にも充分対抗できる。もちろん、これらの前提として、線形の良さを活かして130`運転やカーブ通過速度の向上による高速化をすべきであることは言うまでもない。