関西電鉄i

◆流れ行く時の中で
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by 串八一番
関西電鉄河内線、新日鐵前駅──。
大阪府内を縦横に駆けめぐる関西電鉄の中で、そんな流れから取り残されたかのように、路線網の隅っこにひっそりとたたずんでいる。
ただ通勤客の輸送という機能のみを持った、さしたる特徴もない、古ぼけた駅舎。
数年前、スルッとKANSAIに対応するために自動改札機が置かれ、3台の自動券売機のうちの1台が、高額紙幣やスルッとKANSAIカードに対応した新型に置き換わった。それらが、妙に浮いている。
客のほとんどいない昼下がり、蔀屋(しとみや)に向けて4両編成の旧型車が発車していった。

次に電車がやってくるのは22分後。それが折り返して蔀屋に向かうのは30分後。
この新日鐵前駅と、次の堺駅の間だけは、昼間は30分に1本しか電車が走らない。
他の電車は、南海本線と接続する堺駅で折り返してしまう。

日本の高度成長を支えた重工業、その象徴とも言える製鉄業。
この駅は、そんな臨海工業地帯のど真ん中にある。

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